『西郷の逸話は多く語り継がれているがこれは私(鎌倉在住のK氏)が兄より何回も聞かされた「西郷さんと祖父」の話である。
祖父川井田嘉次郎は慶応3年に生まれ終戦直後80歳で亡くなっている。
戦前本町の八坂神社yの前で小規模ながら「焼酎屋」を営んでいた。広い土間に並んだ大きな甕、主原料となる蒸したてのカラ芋の山、家屋全体に漂う芋焼酎の香りがおぼろげながら記憶の中に懐かしく思い出される。
この話はおそらく明治7,8年頃の事であろう。一時隠棲していた根占からの帰り道下僕と供に休憩の為垂水に立ち寄った。場所は本町の「さかや」現在の南日本銀行駐車場当あたりである。急きょ、町の青少年たちが集められ西郷の講話が行われた。祖父もいい着物を着せられ腰には小さな脇差を帯び勇んで参加した。
西郷は「さかや」の庭に集まった青少年たちに「これからの日本は諸君ら若者が体を鍛え学業に励み世界の大きな国に負けないようがんがらないといけない」と優しく説いたそうだ』
西南戦争には垂水から450名が西郷軍に参戦している。